みなさん、想像してみてください。
言葉が通じない国で出産するとしたら、妊婦はどんな気持ちでしょう。
夫は仕事で忙しい、家族や友達もいない、誰にも立ちあってもらえないとしたら、
どんなに不安なことでしょう。

20代のネパール人のお母さん、先に日本で働いていた夫の元に来日しました。

日本語がまだほとんど話せないときに、妊娠しました。

産科での妊婦健診で、健診料の補助制度があることを誰も教えてくれず、

毎回の妊婦健診の費用は自費で払い続けました。

補助を受けるための「妊婦健康診査受診票」の存在も知りませんでした。

英語が通じる病院で出産しようと思いましたが、出産費用が高く、

日本での出産を断念し、ネパールで帰国して出産しました。

日本に戻ってきてから、妊婦健診の補助制度を知りましたが、お金は戻ってきませんでした。

同じ国で、同じ時代に生きている女性が、孤独と不安の中で出産、そして子育てをしているとしたら、それはとても胸が痛むことです。


わたしは、日本に住む外国人の健康支援活動を行っている保健師です。

看護学生時代にわたしは日本語を教えるボランティアに参加しました。

写真右:山本 裕子
(保健師・看護師、認定NPO法人 シェア=国際保健協力市民の会 在日外国人支援事業担当)

そこで友だちになった外国人の中に、病気になった時に困ったことがある人がたくさんいました。ある人は腰が痛くて病院に行った時、言葉がわからないままに検査をたくさん受け、気づいたら50万円の支払が必要になっていました。

自宅に届く役所からの案内が読めずに、健診が受けられなかったお母さんと子どももいました。

その頃から日本に住む外国人の健康問題を何とかしたいと思うようになりました。

病院で働くかたわら、外国人のための無料医療相談会でボランティアとして活動しました。その後青年海外協力隊の一員としてホンジュラス共和国の保健所で活動したときには、はじめて「外国人として」病気になり、言葉が通じない土地で病気になることの不安を痛感しました。

ホンジュラスで活動している山本(左)と看護師(左から2番目)、保健ボランティアたち


日本社会にとって外国人労働者は、今やなくてはならない存在になっています。

しかし労働目的で来日する外国人の多くは母国で生活に困っている人たちです。時に借金を背負っていることもあります。仕送りをするために日本での生活もギリギリで頑張っています。

夫が先に来日して働き、生活が落ち着いてから妻を呼び寄せることが多く、そのため妻は日本語がわからない不安な状況で、妊娠出産を迎えます。

「親が外国人」の子どもは年々増加し、1987年と比べると3倍に。

2016年の「親が外国人」の出生数は36,157人で、総出生数に占める割合は3.6%で27人に1人となっています。1987年の総出生数に占める割合(1.3%)と比較して約3倍に増えています。

割合がもっとも高いのは東京都で6.3%、16人に1人、東京23区で7.2%、14人に1人となっています*。ここ2年で外国人人口が増えていますので、さらに出生数は増加していると考えられます。
*李節子編:在日外国人の健康支援と医療通訳 誰一人取り残さないために, p24, 2018, 杏林書院

日本人は、妊娠や出産の際に、例えば母子健康手帳をもらうことや乳幼児健診に行くことを当たり前のように思いますが、
外国人は、このようなことがあることすら知らされていません。

東京都内の外国人集住地域の保健センターですら、母親学級に外国人が来たことはないといいます。乳幼児健診が受けられていないケースは外国人が多いという状況も見えてきました。このように、十分な母子保健サービスを受けられずに子どもの健康を守れない状況が生じています。

母子健康手帳に挟み込む「母と子のチェックリスト」。英語版とネパール語版を作りました。

今回、クラウドファンディングをお願いして実現したいことは、
わたしたちがFemale promoter (女性普及員)と呼んでいる、外国人の母子保健ボランティアを育成することです。

出産や育児について相談ができる、同じ国のボランティアがそばにいてくれたら、妊婦はどんなに安心なことでしょう。彼女たちがいれば、言葉がわからなくても、日本の母子保健サービスにしっかりアクセスできるようになります。

現在はネパール人コミュニティを対象に活動していますが、それでもFemale promoter (女性普及員)の数は不足しています。彼女たちの人数を増やし、できるだけ多くの妊産婦のいる家を訪問したいと思います。そして彼女たちに母子保健サービスの情報を伝え、受けることを勧めます。問題を抱える妊産婦が見つかれば、保健センターへ橋渡しをし、その際に、通訳を派遣する活動も行います。

Female promoter(女性普及員)とは、母子保健サービスに詳しい外国人保健ボランティアのことです。

彼女たちがいれば、言葉がわからなくても、日本の母子保健サービスにしっかりアクセスできるようになります。

外国人のお母さん自身が情報を得て、自分と子どもの健康を守れるように、お母さんたちの力をつける手助けがしたい!

言葉の壁だけでなく、文化的背景も影響し、夫の協力や同伴がないと外出できない、病院や保健センターにも行けない、というお母さんがいます。お母さん自身が日本で母子健康手帳を管理し、自身や子どもの健康に関する決定に参加し、行動していけるよう、Female promoter(女性普及員)と共に支えます。

問題を解決するために、今、学びたいこと、やりたいことがたくさんあります。

Female promoter(女性普及員)は、これまでの2年間の活動でコミュニティのお母さんと子どもたちが抱える課題を目の当たりにしてきました。定期的なミーティングや勉強会開催で知識をさらに深め、大切なことをお母さんたちに伝えていきたいと思っています。

2019年9月から1年間(2020年8月まで)の活動資金に充てたいと考えています。

Female promoter(女性普及員)はさまざまな母子保健サービスの情報を伝えます。

外国から来た人にもやさしい、誇れる日本になりたい!

今回クラウドファンディングに挑戦したのは、この問題をできるだけ多くの人に知ってほしかったことも理由のひとつです。小額でも構いません。みなさまどうかよろしくお願いします!

シェアは、今年36年目を迎えました。国内では、1991年より保健医療サービスを受けるのが困難な外国人対象の活動を開始しました。外国人医療電話相談、東京都委託の外国人結核患者治療服薬支援員(通訳)の育成・派遣、外国人自助グループの育成等幅広く活動しています。2016年から「東京都内で外国人母子が適切な母子保健サービスにアクセスできる」を目標に新規活動を開始し、地域の保健センターや外国人コミュニティと連携をしながら、外国人妊産婦が日本の母子保健サービスを理解し、アクセスを改善していけるよう、様々な角度から活動を実施しています。

代表挨拶   シェア=国際保健協力市民の会 本田 徹

在日外国人女性とその子どもたちをめぐる状況は、私たちの気づかないところで、厳しさを増しています。在留外国人のうち女性の占める割合が54%程度と高く、かつ出産年齢女性に含まれる20~30歳代が約半数と多いことも影響しています。二国間の自由経済協定や新設の特定技能労働制度などを使った、さまざまな職場への外国人女性の進出も目立っています。つまり彼女たちは多くの場合、日本の社会が必要としたからこそ「招いた客」と言えます。当然彼女たちの中には出産をしたり、子育てをする女性も多くなります。出生後に親がしなければならない、種々の法的手続きも、外国人には高い言葉の壁となってそびえていますが、これまでは支援もなく見過ごされて来ました。子どもの権利条約を批准した日本ですが、外国人の子どもたちが安心して医療サービスを受け、養育され、言語を含む初等教育を受ける権利は十分に保障されたとは言えない状態です。長年医療通訳養成や健康相談活動などを通じて、多くの経験を積んだシェアだからこそ、地域でできる外国人母子のための健康や福祉の支援活動を、モデル作りも含め積極的に進め、真の多文化共生の日本を創っていきたいと念願しています。皆さまの応援を心よりお願いいたします。

本田徹 
医師。シェア=国際保健協力市民の会 代表理事。高野病院(福島県双葉郡)、山谷・山友クリニック(ボランティア)
Dr.本田徹のひとりごと http://blog.livedoor.jp/share_jp/archives/cat_342979.html
NHKプロフェッショナル出演「山谷を支える、医療の真心」 http://www.nhk.or.jp/professional/2013/0617/

応援メッセージ 山下 眞実子

常日頃よりシェアの健康格差是正への、草の根の活動に敬意を持ち賛同支援をしています。現在ネパール人を中心に在日外国人が増加し、医療アクセス等、多くの問題が出てきている話をよく聞きます。シェアはネパール人コミュニティをつくり、不安の多い妊婦さん、母子保健への支援を積極的に行っています。この活動は意義深く応援しています。皆さんも是非、今回のクラウドファンディングを応援してください。

山下 眞実子
看護師、NPO法人訪問看護ステーションコスモス所長

応援メッセージ プラディップ タパ

私は、協働しているシェアの活動を応援できることを光栄に思います。日本語を話すことができない移住者にとって、日本で適切な保健医療サービスを受けることは大変難しいことです。シェアの支援活動のお陰で、多くのネパール人のお母さんと子ども達、中でも特に杉並地域の人たちは、日本の保健医療サービスの情報を得ることによって、定期妊婦健診、乳幼児の予防接種などの重要な保健サービスを受けることができています。シェアの継続的な取組みは、今後、多くの家族にとって助けになると私は信じています。

Pradip Thapa(プラディップ タパ)
HARMONY PRESCHOOL INTERNATIONAL, CEO、
Everest International School, Japan 元校長

応援メッセージ 田中 サイルン

日本に住む外国人は、言葉の壁、文化の違い、不十分な知識により様々な問題に当たりやすく、また解決する手段を持ちません。そのため日本人と外国人が手を取り合い支援活動や知識の提供をしています。私たちは“友が友を助ける”気持ちを常に共有しています。国籍問わず助け合えば、互いによりよい人生を送れると信じています。支援をぜひお願いいたします。

田中 サイルン
タワン(在日タイ人の健康をサポートするボランティアグループ)代表


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本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。

<寄付型クラウドファンディングの税制優遇について>
特定非営利活動法人シェア=国際保健協力市民の会は、「認定NPO法人」として認定されており、このプロジェクトのご寄付は税制優遇の対象となります。当団体が寄付金の領収証発行を行います。
※「寄附金控除」「税額控除」をお受けいただくためには、確定申告の際に、当団体が発行した「領収証」の提出が必要となります。領収証は年に一度、確定申告時期(2020年1月中)にお送りします。すぐに領収証が必要な方はご連絡ください。
 ※領収証はGoodMorning又はCAMPFIREではなく当団体が発行・郵送いたします。

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