2017/08/22 22:21

静かな静かな毎日だった
家族と静かに暮らしていた
突然ヒトがやってきて山を崩し始めるまでは

イタチの平吉 本当は
新しくやってきたヒトたちとも
仲良く暮らそうと思っていた

でもヒトはみんなこう言うんだ
平吉とっても臭いなあ
食べ物こっそり盗っていく
勝手に屋根裏 住もうとする

お家を壊され 家族もいなくなり
平吉とっても寂しかった
山も森もなくなった
嫌われても、それでもヒトのそば
温もり恋しかった

ある日平吉、旅をしようと思い立ち
西へ西へと歩き出す
歩き続けて海辺の小さな町にたどり着いた
橋の欄干からカモメがさっと降りてきて
やあこんにちは、君はどこから来たんだい

事情を聞いたカモメのクウタ
それなら僕の背中にお乗り
海を見たことあるかい
きっと心が晴れるよ
平吉初めて見る「うみ」にびっくり
そして
一目で海が好きになった

フライト終えてクウタが連れて行ってくれたのは
細い坂道登りきった、小さなお家
ヒトに壊された
あの懐かしいお家に何だか似てる

二人で庭に出てみると
今日の太陽が沈んでいく
いつかお兄ちゃんと一緒に飲んだ
あのオレンジジュースみたいな空

クウタはそっと平吉の背中に羽を伸ばす
たまには泣いてもいいんだ、傍にいるから