2020/05/25 10:41

支援金額が、500万円を突破いたしました。みなさまのご支援、応援、本当にありがとうございます。賛同メンバーの加藤種男さんから、応援のメッセージをいただきました。加藤さんは、企業メセナ活動に長らく携わり、文化政策におけるプロフェッショナルでいらっしゃいます。加藤さん、ありがとうございます。

アーツ・ユナイテッド・ファンドのことを、「市民自治の事例」と、本基金への寄付を「社会的投資」と表現してくださっています。

フリーランスの方を支援することはまさに長い目で見れば、社会にとっての投資であり、寄付者にとっても芸術文化が身近になるなど、良い点があります。みなさまのご支援・応援を引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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「寄付によって市民自治を育もう」

 長い目でものごとを見ようではないか。今は目先のことで、生きることすらままならない状況が生まれているのに、そんな悠長なことを言っていられない、というのも確かにその通りだ。しかし、芸術文化の支援を、二百年、三百年のスパンで見ると、苦境への対処の仕方も見えてくる。スパンを長くとると、今でも愛好されている大部分の芸術文化を支えてきたのは、民衆だったことがわかる。もちろん富裕層が大きな役割を演じたが、貧富の差を越えて市井の民が、文化、芸能、芸術を生活の一部として応援してきた。

一方で、芸術文化の支援において、国が主導したことはほとんどない。たしかに三十年前に芸術文化振興基金が誕生し、それ以来、国もそれなりに助成金の制度を拡充してきた。しかし、その規模や内実は、世界の文化先進国と比較できるレベルでは全くない。予算の比較など、恥ずかしくてできない。かつて、ドイツの演劇制度を視察した時に、ベルリンのある劇場関係者が慨嘆した言葉を思い出す。「我が州政府の芸術文化予算は、まことに貧弱で、一般予算総額のわずかに3%に過ぎないのです」と言われたときには、挨拶のしようもなかった。「お国ではどうですか」と聞かれなかったのがせめてもの救いだったが、十分に屈辱感を味わったものだ。そのドイツに住んでいる日本人アーティストから、コロナで公演や発表が出来なくなったけれども、緊急助成金を申請したわずか二日後に、日本円にすると五十万だとか百万だとかいうお金が振り込まれてきて本当に助かったという話をいくつも聞いた。ドイツ政府は、外国人にまで手厚い保護の手を差し伸べている。

こんな有様ではあるが、実のところ、我々の方が優れている点もなくはない。それは、アーティストや制作者や民間の劇場や民間の美術館などが、互助のシステムを立ち上げようとする意気込みである。国の面倒見はよくないが、むしろ市民自治の精神が発揮されている。この「アーツ・ユナイテッド・ファンド」も市民自治の事例である。

単に、困窮しているから支援をしてほしいというだけではなく、この先、自分たちが何を目指し、それが社会にとってどういう価値を持つかを説明して、いかなる飛躍が生まれるかを示したうえで、賛同者を募ろうという。

これに賛同すると、つまりは寄付をすると、どういうメリットがあるのか。寄付は、フリーランスのアーティストやプロデューサーの困窮をいくらか緩和することになる。しかし、寄付する側にとっては、もっとはるかに大きなメリットがある。何よりも、自分たちの生活とは距離のあるように見えた芸術文化の存在が身近になる。寄付を通して、アーティストやプロデューサーのパートナーの役割を果たせるようになるのである。寄付は芸術文化への社会的投資である。

 私はこの三十年間、お金を出せる人や組織とアーティストや芸術文化団体とを結びつける仕事をしてきた。民間の支援によって、どれほど多くのアーティストやアートプロジェクトが世界に羽ばたくようになったかを目撃してきた。投資効果は大きなものがある。

 ぜひ、みなさまに、当ファンドへの寄付をお願いしたい。くじけそうになっているフリーランスのアート関係者に、あなたには、もっとできることがあるし、するべきことがある、と言って励ましていただきたい。どうぞよろしくお願いいたします。

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<プロフィール>
加藤種男(クリエイティブ・ディレクター/Active Archipelago共同代表)
地域社会創造の政策提言と企業メセナ活動に長く従事し、全国各地の地域創造、創造都市のネットワーク形成に取り組む。文化芸術創造都市・横浜の旗振り役、京都造形芸術大学客員教授などを歴任。著書『芸術文化の投資効果』など。芸術選奨文部科学大臣賞受賞。