2008年からキャリア教育コーディネーターという仕事をしています。
いろいろな社会人や企業の方に小中学校・高校に来ていただき、
多様な仕事・生き方・働き方を見せる「キャリア教育」の出前授業の実施支援や、
そこで使う教材の開発や授業の設計が主な業務。

2016年からは勤労感謝の日に「東京シゴト小学校」という、
様々な仕事を小学生に体験してもらう学校外イベントを開催してきました。 

いま、学校では、こうしたキャリア教育を行うために、
たくさんの社会人に協力してほしいというニーズが高まってきています。

▼学校の授業に協力したいのに「できない理由」

特に東日本大震災以降、地域や学校のために、
「何かをしたい」「協力したい」という、意志がある社会人も増えてきたように思います。
キャリア教育の授業への協力にも、興味を持ってくださる方が増えてきました。
これは、とてもいいことだと思っています。 

しかし、ここにひとつ、課題があります。

                                    *東京シゴト小学校2017のひとコマ*

社会人がなんの準備もなしに学校に行っても、
子どもたちの前で話をすることができない、伝わらない、
授業として成立させることがむずかしいという点です。

社会人と同じ言葉で説明しても、子どもたちには理解がむずかしいです。
自分の仕事を子どもにわかるように伝えるという点に、
大きなハードルがあるのです。
そのため、せっかく「協力したい」という気持ちがあるのに、
子どもには伝わらず、残念な結果になることも少なくありません。

子どもが子どもの理解度で「わかる」ように、
自分の仕事を「プログラム化すること」が必要。

そして、この「プログラム開発」の部分が、
行政の教育支援施策の中でも、
もっとも置き去りになっている部分のひとつでもあります。

▼どんな仕事でも、おもしろさを伝えられる。

子どもたち、特に小学生は、見えている世界が非常にせまいため、
法人を相手にした業種や、スタッフ部門の職種については、
理解がむずかしくなるということは、想像に難くないでしょう。

そんなこともあり、
数多くある仕事体験イベントや常設型の施設でも、
「子どもにわかりやすい仕事」に偏ってしまう傾向もあります。 

子どもにわかりにくい仕事は、伝える必要はないのでしょうか?

世の中には、たくさんの「知られていない仕事」もあり、
それが社会を支えていることは間違いありません。

キャリア教育コーディネーターとしては、
こうした「子どもにはわかりにくい仕事」を、
もっともっと、伝えていきたいと思っています。

例えば、2017年の「東京シゴト小学校」では、
企業の人事部の方に登場していただき、こんな体験プログラムを実施しました。 

体験プログラムを開発する上でいちばん大事にしたのは、
「その仕事の中で大事なポイント」を体験できるようにすること。

「人事部の仕事で大事なことはなんですか?」とお聞きしたところ、
「会社の方針を具現化するだけでなく、
 社員にも夢をかなえてほしい。その支援が人事部の役割。」

という答えが返ってきました。

そこで、「社長の夢」「社員の夢」それぞれのカードを選び、
どちらも満たせる会社の新しいルールを考えてもらうことに。

           *企業人事のお仕事体験のワークシート*

子どもたちからは「社長と社員の悩みをどうやって解決するのかを
考えるのが楽しかった」という声も出てきました。

このほか、2017年のシゴト小学校では、
マーケティングや公共空間プロデューサーといった、
子どもたちの「知らない仕事」も体験プログラムにしました。
合計6つのお仕事の体験ブースを作りましたが、
どの仕事も30分程度で体験できるものとし、
複数の仕事の体験をしてもらいました。

▼仕事を、子どもが体験できる「プログラム」にしよう

下記の写真は、「建築・土木のお仕事」の体験の様子です。

工作体験のプログラムは数多く見られますが、ここではあえて、
「見本をもとに設計図を作る」というプログラムにしました。

建築のお仕事で、作る前の「段取り」がもっとも大事だからです。

こうして、大人があたりまえにやっている仕事を分解し、
体験プログラムとして抽出することで、
「そういうことか!」「そんな仕事があるんだ!」と、体感することが可能になります。
これは、どんな仕事であっても同じように実現可能だと思っています。
「子どもに伝えられない仕事」はないのです。

 こうした「体験プログラム」を持つ大人を、もっともっと増やしたい。

 子どもたちに人気のお仕事はその「裏側」を体験してもらえるように、
また、子どもたちが知らない仕事にも出会ってもらえるように、
2018年勤労感謝の日のシゴト小学校での実施をマイルストーンとし、
いろいろな仕事の「体験プログラム」を開発したいのです。

 

目標は25職種。

例えば、司法書士や行政書士・税理士などの士業、
企業の総務や経理などのスタッフ部門の仕事、
コンビニのエリアマネージャー、イベント運営会社、
銀行員、不動産の仕事、編集者、営業マン、デザイナー・・・

「この仕事ってこんなことしてたんだ!」と、
大人も気になる仕事体験プログラムを作りたいと考えています。 

具体的に作成するものは、2点。

●30分程度のプログラムの流れ(設計書)
●そこで使用するワークシートなどのツール類

小学校5−6年生が30分くらいで体験することを想定しています。

(開発したプログラムは、2018年11月23日
 シゴト小学校にて子どもたちに体験してもらいます。)

こうして、
自分の仕事を体験してもらえる「プログラム」を持つ社会人が増やすことで、
学校などから協力依頼があっても、
すぐに協力できる支援体制ができるのではないかと考えています。 

▼オープンソース化することで、全国で活用できるように

開発した体験プログラムは、
全国各地で活用できるよう、オープンソースを前提としたいと考えています。
(WEBサイト等での公開を予定しています。) 

例えば人事部のお仕事体験プログラムであれば、
特定の企業だけでなく、
いろいろな企業の人事部の方が子ども向けに実施できる可能性があります。

また、現在、東京シゴト小学校2017で実施したプログラムを事例にしながら、
体験プログラムを組み立てるための「ノウハウブック」も制作中です。
 (3月下旬リリース予定)

いずれも
「学校から授業に来て欲しいという依頼があったけれど、
 何をやったらいいかがわからない・・・」という方に
武器として使ってもらえるツールにしたいと考えています。

そして、全国で、自分の仕事を語り・伝える大人が
学校で授業を行うことがあたりまえになる、
そんな社会にすることをめざしています。

▼資金の使い道

1職種の開発費用の目安6万円を想定しています。
プログラムの開発は、
キャリア教育分野の専門家であるキャリア教育コーディネーターが担います。

  • 2018/10/22 21:28

    今年は世田谷・成田の2カ所で同日開催! 新規開発したお仕事体験プログラムを、今年のシゴト小学校で実施します。 世田谷・成田の2会場同時開催です。 勤労感謝の日は子どもと大人が”はたらく”を考える日。 小学校5ー6年生のお子さんをお持ちの方、ぜひお越しください!   詳細情報は下記か...

  • 2018/04/10 16:04

    「シゴト小学校のつくりかた」(B5サイズ16p)完成しました。 2017年勤労感謝の日に開催した「東京シゴト小学校」での 6つのお仕事体験プログラムの紹介のほか、 「自分の仕事を体験プログラムにするには?」という 簡単なワークシートもついています。 どんな大人でも、どんな仕事でも、 ...

  • 2018/03/28 16:21

    チラ見せ・・・ 2017年11月に開催した「東京シゴト小学校」では 6人の社会人先生に協力してもらい、 仕事体験プログラムを提供してきました。 ノウハウブック「シゴト小学校の作り方」では、 6つの仕事体験プログラムがどんなコンセプトで作られているかを ご紹介。 また、「自分の仕事...

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