みなさんは、ハンセン病という病気をご存知ですか?

 かつて、その病にかかった人たちは、家族と無理やりに引き離され、「療養所」とは名ばかりの、塀に囲まれた施設に暮らすことを強制されました。それも、国の政策によって。

  戦後、ハンセン病は薬によって治る病気となっても患者たちは、療養所の外で暮らすことも故郷に帰ることも、許されませんでした。

 子どもができたのに、 病を理由に中絶させられる夫婦たちもいたのです。「隔離政策」は1996年まで続きました。

 

 故郷に帰ることのできないまま、療養所で亡くなった大勢の人たち。そうした方々が遺した絵画作品を調査している私たちは、2018年3~5月にかけて、鹿児島・奄美大島で「ふるさと、 奄美に帰る」という展覧会を開催するため、このプロジェクトを立ち上げました。

 本人に代わり、せめて絵だけでも里帰りさせたい。少しでも多くの人に、絵を見てもらいたい。そんな思いを持っているからです。

画家となった入所者たち

 熊本県にある日本最大の療養所「菊池恵楓園」には、「金陽会」 という絵画クラブがあります。怒り、悲しみ、 そして仲間たちと見出した喜びーー。「塀の中」 で抱えてきた様々な思いを、絵筆に向けた人たちです。

 会が発足したのは1953年。 絵が好きだった療養所の入所者たちが集まり、毎週金曜日に細々とみんなで作品をつくり続けてきました。 園内の文化祭などで発表していたといいます。

 それから半世紀。ほとんどのメンバーは恵楓園で亡くなられました。ハンセン病の差別家族に迷惑をかけないようにと、名前を変え、 故郷に帰ることないままに。

 療養所には、 メンバー10名の作品が850点以上残されています。入所者が亡くなった場合、 遺族が引き取らない遺品は焼却処分されるのが常でした。 全国に13ヶ所ある療養所でこれだけの作品が残されているのは奇跡的なことです。 

展覧会を始めようとした理由

 「金陽会」メンバーの一人、大山清長さんは奄美大島出身です。故郷を無理やりに離されて50年あまり、絵筆を取り続けてきましたが、ついに帰ることなく療養所で亡くなりました。

  そんな大山さんの《奄美風景》という作品があります。これは、奄美大島出身の人ならば誰でも知っている「名瀬の立神」を記憶だけを頼りに描いたものです。

 この絵を観た奄美出身の人が、「これは、名瀬の立神だ!」と指差しながら嬉しそうにおっしゃったとき。「奄美大島の人たちに、ぜひこの絵を観てもらいたい」「遠く離れた場所で、こんなにも故郷を愛していた人がいたことを知ってもらいたい」と強く感じたのです。

これまでの活動

 私たち実行委員会は、学芸員やライターなど、ハンセン病回復者に携わってきた人たちで構成されています。

  それぞれが、療養所の方たちが描く絵に出会い、 「金陽会」の方たちが自分の子どものように大切にされてきた絵に込められている想いを知ったときから。

 この絵をたくさんの人たちに観てもらいたい一心で活動を続けています。 

 

  私たちはまずは作品の保存活動に着手しました。サイズを測り、写真を撮影し、額掃除などの活動を2016年から月に1回のペースで続けています。

  また、2016年末には東本願寺のご協力を受け、京都の「しんらん交流館」で「いのちのあかし絵画展」と題して展覧会を開催することができました。

 今回の展覧会では、奄美大島出身のメンバーの作品を中心に展示する予定です。

資金の使い道

 実行委員会のメンバーはすべて手弁当、 ボランティアで今回の企画に参加しています。できるだけ多くの方に見ていただきたい、そんな思いから、 展覧会自体も無料で開催します。

 今回の展覧会は、奄美大島という離島での開催のため、 陸路で絵を運ぶことができません。公益財団法人朝日新聞文化財団から援助はいただきますが、すべてを賄うことはできないため、クラウドファンディングでの資金集めを必要としています。

  クラウドファンディングでは、各会場への移動費、展示作業設営費など、展覧会開催に最低限必要な資金を集めることを目標としています。

 また、「観に行きたくても遠くて行けない!」という方々にも絵を観ていただくために、カタログを制作しお届けしたいと思っています。集まった資金は、その制作費にも充てさせていただきます。

リターンについて

 リターンでは、製作するカタログのほか、「金陽会」のメンバーたちの絵画のポストカードなども設定しています。ぜひ、ご覧ください。

 また、現在も一人現役で絵を描かれ続けているメンバー・ 吉山安彦さんが描いた貴重な原画のほか、アトリエ見学会や、奄美大島の展覧会にお越しいただいた方向けのツアーなども設定しております。なお、こちらは交通費が実費となってしまいます点、ご了承ください。

最後に

 信じられないような隔離政策が行われ、人生を台無しにされながらも、絵を描くという行為に励まされ生き抜かれた方々がいらっしゃると いうことを教えてくれた、絵画たち。

  保存し後世に伝えると同時に、たくさんの方に観ていただきたい、絵から伝わる想いに触れてもらいたいと切に願っています。

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