NPT再検討会議延期に伴う対応について

現在、新型コロナウイルスによる感染症が世界中で発生しており、患者数の増加が伝えられています。それに伴い、外務省は3月25日、全世界を対象に危険情報「レベル2(不要不急の渡航は止めてください)」に指定しました。4月27日から開催を予定していたNPT 再検討会議も延期が見通されているため、日本被団協は3月16日、代表団の国連派遣中止を決定しました。

当クラウドファンディングは、NPT再検討会議に合わせて30人の被爆者がニューヨークへ渡り、証言活動を行うことを支援するために呼びかけておりました。そこでこの度、被団協、そしてGoodMorningのスタッフのみなさんと協議のうえで、以下のように対応させていただきたくことにいたしました。

◯NPT再検討会議は延期にともない、今回の支援分については「年内の被爆者国連派遣費用」とし、被爆者が国連で証言活動を行うための費用として使用する。 

※現在、10月の国連総会に合わせて被爆者を派遣し、証言活動実施を計画しています。また、もしも年内の派遣が困難になった場合、別途協議を行い対応させていただきます。

◯しかし、当初の目的からは変更してしまうため、今回の対応について納得いただけない方については個別で返金対応とさせていただく。

※以上の対応についてご不明な点がある方は当クラウドファンディングのメッセージかinfo@hibakusha-appeal.netにご連絡ください。


はじめまして、ヒバクシャ国際署名のキャンペーンリーダーの林田光弘と申します。

長崎で生まれ育ち、幼い頃から原爆の被害について身近に触れてきました。私自身、被爆者の祖父を持つ被爆三世でもあります。これまで10年以上にわたり、広島・長崎の被爆者のみなさんと一緒に核兵器廃絶へむけた活動に取り組んできました。

これまで私たちヒバクシャ国際署名は、被爆者のみなさんとともに国内外1000万人以上の方々から署名を集めてきました。今回、この署名活動の呼びかけ団体でもある「日本原水爆被害者団体協議会」(日本被団協)がスタートさせた被爆者国連派遣募金のサポートとしてこのクラウドファンディングに挑戦します。

今年の4月から5月にかけて米ニューヨーク国連本部で核不拡散条約(NPT)再検討会議が開催されます。

現在、米国によるイラン核合意からの離脱、北朝鮮非核化交渉の停滞、米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約の失効などを理由に「第二次世界大戦後、最も核兵器使用のリスクが高まっている」ことをご存知ですか?

その一方で、今年は戦後75年。広島・長崎で被爆した被爆者たちの平均年齢は83歳になります。大げさではなく、被爆者がいなくなる日はもう目の前に迫っています
だからこそ今回、日本被団協は被爆者30人を含む50人の代表団としてこの会議に参加することを決断しました。事務局長の木戸さんは「ここまで大規模に海外に代表団を送るのは今回が最後になるかもしれない」と語っています。

被爆者のことばには、世界を変える力があります。
私自身、被爆者に心を動かされた一人です。

ここで少し、私がお世話になった被爆者の一人、谷口稜曄(すみてる)さんのことを紹介させてください。

谷口さんは16歳のとき郵便配達中に長崎で被爆し、背中一面に大やけどを負いました。

病院ではまともな治療も受けられず、谷口さんはあまりの痛みに何度も「殺してくれ」と叫びました

3年7ヶ月後、なんとか退院したものの、谷口さんの本当の苦労はそこからが始まりでした。

再就職のとき、結婚をするとき、自身の身体のことで周辺からは悲しい言葉が投げつけられました。結婚し、子どもができた時には、健康な子が生まれるのか、健康に育つのか、大人になるまで毎日不安でした。子どもと海水浴に出かける時は自分だけはシャツを身につけました。

それでも谷口さんは、時には傷ついた自らの身体を見せながら、2017年8月に亡くなるまでずっと長崎の核兵器廃絶運動のリーダーとして証言を続けました。

谷口さんは亡くなる一ヶ月前に核兵器禁止条約が国連で成立したことを受けて、世界にビデオメッセージを発信しています。

※映像では谷口さんが被爆した当時の写真が映されています。

メッセージのなかでも、特に印象に残っている部分を引用します。

想像を絶する苦しみを抱え、さらに自らが傷つくことがわかっていても、もう二度と自分と同じような経験を他の誰にもさせたくないから証言を続ける。そんな谷口さんの姿に人間の尊厳を感じ、同時に「それだけ核兵器が恐ろしいのか」と、恐怖を感じます。

谷口さんだけではありません。

母親を目の前で失ったトラウマに苦しむ人
ケロイドによっていじめられることを恐れ夏でも長袖以外の服を着ない人
甘いものを食べることなく亡くなった親友を思い今でもお菓子を食べない人

これまで私が出会った被爆者たちはそれぞれがいろんな痛みを抱えながら、証言を行なっています。そして私はそこにこそ、今回30人もの被爆者が現地へ渡る意味があるのだと思います。

被爆者がメッセージを届けることは国連や世界の指導者からも期待されています。

被爆者が国際会議に出席すると、必ず会議の議長自らが被爆者と対話します。あらゆる世界の問題に取り組む国連がここまで手厚い対応をするのは珍しいことだそうです。それだけ、被爆者は大きな存在なのです。

今回の活動では、世界の指導者の心を動かすことに加えて、もう一つ重要な役割があります。
それは「被爆者の思いを世界の若者につなぐこと」です。

田上富久長崎市長がここ数年、よく口にする言葉です。
実際、被爆地広島と長崎では、被爆体験の継承にむけて様々な取り組みが行われています。

しかし、世界が核兵器廃絶に舵を切るためには、広島・長崎の経験をアウシュビッツのホロコーストと同じように世界の記憶にすることが必要だと感じます。戦後75年、そしてNPT再検討会議が重なる今年だからこそ、被爆者のメッセージを世界に広く伝えるチャンスです。

そのため、現地では学校や教会など若者たちに対する証言活動を多数予定しています。

また、今回のNPTでは私を含む3名のユースが現地で被爆者とともに渡米します。SNSを活用し、現地の様子を日本に伝えたり、現地の方々が被爆者と出会うための情報を発信したいと思います。谷口さんのように、これまでメッセージを発信し続けた方々の思いを代わりにニューヨークに届けたいです。

そのほかにも滞在期間中は国連やその周辺で様々な取り組みを行います。

国連本部ロビー原爆展を開催これまでの原爆展の様子。会議参加者に限らず、現地の家族や若者も多く足を運んでくれる。

各国政府代表を招いた集会の開催

昨年10月の国連総会ではオーストリアのヤン・キッカート大使のサポートで、国連内で証言会を開催した。

ヒバクシャ国際署名の提出昨年はボリビアのサチャ・ヨレンティー国連総会第一委員会議長に署名目録を提出した。

各国のNGOとイベントに参加ニューヨーク市内、ヒバクシャ国際署名に取り組む米国の若者らと被爆証言とコンサートの集い。

現在、被団協は1000万円を目標に国連派遣募金を始めました。当クラウドファンディングはその一環として実施しています。

集まったお金は以下の活動資金として使用いたします。

1.被爆者ら30名を含む50名の代表団のニューヨークでの活動経費
 ●現地交通費
 ●イベント開催経費
 ●通訳経費

2.ヒバクシャ国際署名の提出行動のための経費
 ●場所代や音響設備等手配を含む

3.それらを支え世界に情報発信するユース(10~20代)3名の派遣費
 ●現地からの情報発信と記録
 ●ユースとしての発言

核兵器の廃絶を語ると「無理だ」「現実的ではない」といった言葉をよくぶつけられます。しかし、オバマ大統領の誕生も、同性婚が認められるようになったことも、50年前には想像もできないことでした

この文章を最後まで読んでくださった皆さんには、ぜひ改めて被爆者の証言を聞いてほしいです。そして75年が過ぎた2020年が「核兵器使用の危機がかつてないほど高まっている」この状況を考えて欲しいのです。

あなたの力が必要です。どうか力を貸してください。よろしくお願いします!

ヒバクシャ国際署名とは

2016年に世界の被爆者のみなさんの呼びかけでスタートした活動。
被爆者のメッセージに賛同した方々から核兵器の完全廃絶のための署名を集めている。

今日までに国内外から1051万人の署名が集められています。
また、自治体首長からの署名は全体の7割を超え、1228市区町村にのぼっています。
(日本の全自治体数は1,724)

被団協とは

広島・長崎の被爆者の全国組織。核兵器の廃絶と原爆被害への国家補償を訴えてきた。被爆の惨状を伝える証言活動や原爆展の開催も国内外で続けている。
1980年代、ドイツで証言を行う被爆者の写真

先日ローマ教皇来日が話題になりました。日本被団協は2017年にバチカンで初めての軍縮国際会議が開かれた際にも招待を受け、和田征子日本被団協事務局次長が参加しました。

  • 2020/02/04 10:30

    被爆者国連派遣募金に関する記者会見ヒバクシャ国際署名は、2月3日(月)に都内で被爆者国連派遣募金に関する記者会見を行い、当クラウドファンディングについて紹介致しました!会見では、日本被団協事務局長木戸季市さん、今回ユースとして渡米する高橋悠太さんに加えて、Goodmorning代表の酒向さんに...

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