▼はじめに

ライターの「みわよしこ」こと三輪佳子です。

2011年以後、日本の福祉と社会保障、特に生活保護について著述活動を行っています。

また2014年からは、大学院博士課程で生活保護制度に関する研究も行っています。

▼トランプ政権下、低所得層と障害者の暮らしはどうなる? 福祉・社会保障研究はどうなる?

2017年1月にトランプ政権が発足し、オバマケアの廃止など福祉と社会保障を削減する方針を次々に打ち出しています。またホワイトハウスのWebサイトから障害に関する記述が削除されるなど、1970年代から米国で積み上げられてきた努力の必要性や重要性を「あっさり」と否定する動きもあります。

米国の、低所得層や障害者をはじめとする社会的弱者の生活には、否応なく、大きな変化が及ぶでしょう。

並行して、人文社会科学系を中心に、トランプ政権は大幅な縮小方針を打ち出しています。またジャーナリズムに対しても敵対的です。低所得層や障害者の暮らしの変化を調査し把握し伝える人々の活動も、大きな挑戦を受けています。

この状況下で、低所得層や障害者の暮らしは、どのように変化していくのでしょうか? 人々は、どのように対応していくのでしょうか?現状を知り、伝えることを職業としてきた人々は、自分自身の活動基盤が揺らぐ中で、どのように行動するのでしょうか? その結果は? そこで、米国の「コミュニティ」はどのような機能を果たすでしょうか?

本プロジェクトは、米国内の3~5地域を主対象とし、概ね2年間にわたる滞在型調査研究を通じて、トランプ政権下での社会的弱者の生活の変化と、その周辺の人々の活動の変化を調査します。また、米国の「コミュニティ」の姿を浮き彫りにします。

▼知っているようで知らない、近くて遠い隣国・米国

米国と日本は、太平洋に遠く隔てられていますが、良くも悪くも、深く密接な関係を持ち続けています。日本に伝えられる米国の情報も、質量ともに豊富です。また、日本の福祉・社会保障政策には、米国をモデルにしていると思われる部分が多大です。

しかし日本人は、米国を理解していると言えるでしょうか? たとえば、日本でいう「自助・共助・公助」の「共助」が想定している「共同体」は、米国の「コミュニティ」とは似て非なるものです。

では、どう異なるのでしょうか? 大陸を開拓していった人々が、町を造り、自分たちのための知の砦である図書館を造り、図書館の中に子どもたちのための学校を開設して学校教育を行ってきた米国の歴史は、米国の「コミュニティ」をどのように形作っているのでしょうか? それは日本の「共同体」とどのように異なるのでしょうか? 米国の福祉政策や社会保障政策をモデルにした政策を日本で実施するとき、好ましからぬ想定外の影響が発生するとすれば、原因は何なのでしょうか? 日本に、米国の「コミュニティ」のようなものを作り上げることは可能なのでしょうか?

米国を理解すること、米国の一地域に対して「よくわかった」という段階に達することは、決して容易ではありません。しかし、トランプ政権下の激変と人々の対応を、年単位でデータと語りの両方から調査し検討すれば、理解するいとぐちや、理解を深めるための道筋を発見することは可能でしょう。

そこで、本プロジェクトを企画しました。

▼半導体・コンピュータと付き合いながら、福祉と社会保障へ

私は東京理科大学大学院理学研究科修士課程(物理学・光情報処理)を修了後、電機メーカーで、半導体の計算機シミュレーションに関する研究・開発に10年間従事。誰もが「そこに問題がある」と思っていないところから重要な現象を発掘し、問題を解決する方法を示したり、あるいは、もはや問題が解決できないことを示したりするのが得意技でした。

2000年、会社を退職して科学・技術ライターに(科学・技術に関する執筆は、2017年現在も続けています)。

2005年、運動障害を抱えて車椅子生活となったことをきっかけに、日本の福祉・社会保障と、否応なく向き合うことになりました。「生きる」「暮らす」の基盤があやふやな状況では、どのような努力によっても社会生活・職業生活は実現できないことを、経験を通じて思い知ることの連続でした。

2011年2月、米国を訪れ、AAAS(米国科学振興協会、科学雑誌『Science』発行元)の年次大会に初参加。このとき、米国の科学界の障害者の社会参加に対する長年の取り組み、戦略、達成を知り、長年にわたって取り組んできた方々から経緯を聞き、衝撃を受けました。

興奮さめやらぬ翌月、2011年3月、東日本大震災報道で被災地の障害者の状況がなかなか伝わってこなかったのにヤキモキしたことをきっかけとして、福祉と社会保障に関する取材・執筆活動に取り組みはじめました。2012年6月にスタートした、ダイヤモンド・オンラインでの連載『生活保護のリアル』シリーズは、2017年2月現在も連載継続中。

著書は『生活保護リアル』(日本評論社、2013年)、『いちばんやさしいアルゴリズムの本』(共著・技術評論社、2013年)、『おしゃべりなコンピュータ 音声合成技術の現在と未来』(丸善出版、2015年)など。

執筆活動を継続する一方で、「現実に働きかけるためには学術的な基盤が必要だ」と気付き、2014年、立命館大学大学院先端総合学術研究科に編入。50歳を過ぎてからの「文転」、学校で最後に学んだ法や制度は高校社会科の政治・経済(当時)、というハンデに苦戦しつつも、生活保護制度決定の政治を研究。2016年、初めての査読付き論文を公開。福祉・社会保障関連の国際学会発表は、2017年2月で5件になります。

また、国連自由権規約委員会の日本審査(2014)・国連女性差別撤廃委員会の日本審査(2016)において、障害者・貧困状態にある人々・シングルマザーと子どもたちの権利の観点から、レポート送付・ロビイングなどの活動に参加しました。女性差別撤廃委員会では委員から日本政府への質問にレポートの内容が使用され、日本政府への勧告にも含められました。もちろん、海外に行くたびに、現地や近辺で貧困問題に関する取材や調査を行っています。

▼資金の使い道

・米国で3~4回、延べ6~8ヶ月、調査のために滞在するための経費

・結果をまとめた冊子作成

を想定しています。

ただし状況によっては、一回あたりの滞在日数を短めにし、回数を増やすことになるかもしれません。

もし目標を上回る金額に達した場合には、福祉・社会サービスを利用している日本人などの研究協力者を同行して「当事者目線」からの意見を得る・冊子の漫画版を作成する などに利用したいと考えています。

▼リターン

1万円以上のご提供をいただいた方々には、経過報告書の詳細版(3ヶ月おき、2年間に8回を予定)をお送りします。

▼最後に

トランプ政権下、社会的弱者や、政権に価値を認められない活動に従事してきた人々が、どのように対応し、抵抗し、生き延びるか。

日本人はそこから数多くのヒントを得ることができると思います。

ともに、米国の「これから」を見届けましょう。

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