はじめまして。私たち首都圏若者サポートネットワークは、「社会的養護」のもとで育った子ども・若者たちを支援するために生まれた民間の団体です。(首都圏若者サポートネットワークのくわしい紹介はこちらをご覧ください。)

 今回は、困難を抱えた子ども・若者たちに寄り添って伴走型の支援をしている方々に助成金を給付することで、大人のサポートを必要としている子ども・若者たちを応援していく「若者おうえん基金」へのご支援をいただきたくキャンペーンを立ち上げました

 まずは、なぜ基金を立ち上げる必要があったのか、その背景についてお伝えしたいと思います。


 みなさんは「社会的養護」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。親などの保護者がいなかったり、適切な養育を受けられなかったりする子どもたちを、公的な責任で保護し、育てていくことを「社会的養護」と言います。

 いわば、社会が親代わりとなって、子どもたちを育てていく仕組み。それが社会的養護です。

 貧困や虐待、両親の不慮の事故・病気など、その背景はさまざまですが、日本には社会的養護を受けている子どもたちが、約4万5千人います。子どもが500人いれば、そのうち1人は社会的養護を受けている計算になります。

 また、数字には表れていませんが、児童虐待のニュースが後を絶たないことからもうかがえるように、困難な状況にありながら社会的養護の網からこぼれ落ちてしまっている子どもたちも、かなりの数がいると考えられます。


 社会的養護の形態はいくつかありますが、とりわけ人数として多いのが児童養護施設です。全国に約600ヵ所ある施設に、約2万6千人の子どもたちが暮らしています。

 戦後の孤児院のイメージもあり、親と死別した子どもが入る施設と思われがちな児童養護施設。しかし、近年の入所理由でもっとも多いのは、親からの虐待です。

 2013(平成25)年の調査では、児童養護施設に入所している子どもの約6割、乳児院に入所している子どもの約4割が、過去に虐待を受けた経験があるという調査結果が出ています。

 虐待を受けた経験は、子どもたちの心に大きな傷を残します。ケースによってかなりの個人差があるため一括りにはできませんが、大人になってもその後遺症に悩まされるなど、生きるうえでの困難を感じる人たちが多いのが実情です。


 ただでさえ虐待などの辛い経験をしていることが多い社会的養護の子どもたちですが、彼らは子どもから大人になり社会に巣立とうとする際にも厳しい現実に直面します。

 現行制度のもとでは、児童養護施設・里親での「措置」は原則として18歳まで。「措置延長」は最長で満20歳までとなっています(自立援助ホームの場合は、22歳に達する日の属する年度の末日まで)。つまり彼らは、原則的として18歳になると施設や里親家庭を出て自立を求められるのです。

 社会的養護のもとで育った子どもたちは、親や親族などに頼ることができないことが多く、学費や生活費などもすべて自分で働いたお金でまかなわなければなりません

 経済面のみならず、一般的に考えて18歳前後の若者が大人たちのサポートなしに自立するには、多くの困難があります。子ども時代のつらい経験がある若者ならばなおさらです。


 しかし、当事者の若者が置かれている状況が困難であればあるほど、現行の制度では対応ができません。心ある人たちの持ち出しによって、彼らに寄り添う伴走型の支援がおこなわれているのが現状です。

 2019年2月には、渋谷区の児童養護施設で当時の施設長が元入所者に刃物で刺され亡くなられた事件がありました。

 殺人自体は許されるものではありませんが、事件を起こした男性の罪ばかりではなく、その背景にあった生きづらさにも目を向ける必要があります。事件の起きた施設職員の方々は、施設退所後の人々へのアフターケア支援にも熱意をもって取り組まれていましたが、これにも限界があります

 その意味で、この事件は社会的養護を巣立った人たちへの支援の必要性とその不足を私たちに突きつけるものでもありました。


 社会的養護のもとで育った若者たちが社会に巣立っていくためには、彼らに寄り添いながら支援をおこなう「伴走者」の存在がとても重要です。

 困難に直面しても頼れる大人がいない。そんなプレッシャーに押しつぶされそうになりながら生きる子ども・若者たちにとって、伴走者はかけがえのない存在です。しかし、伴走者たちの支援活動を金銭的に支える制度は、残念ながらいちじるしく不足しています。

 そこで私たち首都圏若者サポートネットワークは、2018年8月に社会的養護のもとで育った子ども・若者を伴走者と一緒にサポートする「若者おうえん基金」を立ち上げました。


 若者おうえん基金の最大の特徴は、伴走者への助成を通じて困難を抱えた子ども・若者たちを支援することです。みなさまから広くご支援を募り、集まったお金を助成金として伴走者たちへ給付し、子ども・若者たちの支援に役立てます。

※クラウドファンディングの手数料を差し引いた金額の85%を若者おうえん基金の助成にあて、15%を運営経費に使わせていただきます。

 2018年度は、クラウドファンディング、銀行振込などによる寄付、生活クラブの組合員カンパなどを通じて、13,713,509円の支援金が集まりました。そして公募選考の結果、一般枠と先駆的実践枠をあわせて下記の9団体10件の活動に対して総額 10,567,020円の助成を実施することができました。


 若者おうえん基金が助成のために活用するのは、みなさんからいただいた支援金です。大切なお金をきちんと子ども・若者たちのために使われるようにするため、次のような手順で助成先を決定しています。

1.助成先の公募
 まず、埼玉県・東京都・神奈川県に暮らす社会的養護のもとに育った子ども・若者を支援する伴走者から助成が必要な支援プランや事業を公募します。(助成金の公募については、こちらをご覧ください。)

2.選考委員会による選考
 学識者や子ども・若者への伴走型支援をおこなっている実務家などからなる選考委員会を組織し、選考をおこないます。選考は、書類選考と面接に次の3つの評価基準を点数化したうえで、選考委員の合議によって助成先を決定します。
・必要性 (どういった支援のために助成が必要なのか)
・緊急性 (なぜ今のタイミングで助成が必要なのか)
・信頼性 (計画通りに支援が実施できるか)

3.調査研究への協力
 また、助成決定後におこなう運営委員による調査への協力を、助成を受ける条件とします。この調査研究により、これまで体系的な把握がされてこなかった伴走型支援にまつわる状況を明らかにすることがねらいです。


 今年度は次のようなスケジュールで若者おうえん基金の助成をおこなう予定です。

〜11月末  助成先の公募
12月中旬  一次審査(書類選考)
1月上旬   二次審査(面接)
2月上旬   助成金給付
6月中旬   活動報告会(一般公開で助成先の活動報告をおこないます)


 社会的養護のもとに育った子ども・若者たちが抱えている困難。その原因は、彼ら自身にそもそも問題があって生まれたものではけっしてありません。そもそも人は、自分ひとりの力で生きられるものでもありません。しかし、頼ることのできる身近な大人がいない子ども・若者たちが、この日本の社会にもたくさんいます

 だからこそ、同じ社会に暮らすみんなの力で、彼らが学び、働き、社会のメンバーとしてみずからの力を発揮して生きていくことを応援する仕組みが必要なのです。

 ひとりひとりのできることには限りがあります。ですが、ひとりでも多くの方にご協力いただくことで、確実に支援できる子ども・若者の数は増えていきます。ご自身のできる範囲で結構です。「若者おうえん基金」をご支援いただけたらとても嬉しいです。

 また、他の多くの社会課題と同じように、この社会的養護とそこで育った子ども・若者をとりまく問題もほとんど知られていません。関心をもっていただけたなら、みなさんの周りの方にもこのプロジェクトをお知らせいただけると幸いです。

 いつの日かこのネットワークの存在が必要なくなる未来をめざし、精一杯がんばりますのでご支援をお願いいたします!

※本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。


宮本みち子(放送大学名誉教授、千葉大学名誉教授)
首都圏若者サポートネットワーク 運営委員長

村木厚子(元厚生労働事務次官)
首都圏若者サポートネットワーク 顧問

早川悟司(社会福祉法人子供の家 児童養護施設子供の家 施設長、社会福祉士)
首都圏若者サポートネットワーク 運営委員

菊池真梨香さん(一般社団法人Masterpiece 代表)
若者おうえん基金2018年度助成先団体

小川杏子さん(NPO法人パノラマ)
若者おうえん基金2018年度助成先団体

池本修悟(公益社団法人ユニバーサル志縁センター 専務理事)
首都圏若者サポートネットワーク 事務局長

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