▼映像を残す

みなさんは、永瀬清子という詩人をご存じでしょうか?東京で活躍していた清子は終戦直後に岡山県赤磐市に帰郷し、岡山市内に転居するまでの20年間を生家で暮らしました。今回解体する蔵2棟は、すでに崩壊が進んでおり隣接する母屋を傷め始めています。母屋の雨漏りは止めたものの、釜場と離れの改修が手つかずの状態では、蔵まで守ることは出来ないと苦渋の選択をし、蔵を切り捨てて前に進むことを選びました。

この場所には詩にも登場する農具が残されており、生活に根ざした作品を多く残した清子の詩の世界を象徴する場所となっています。その蔵の解体を映像で残すことで、文学という範疇を超え、世代を超え、国境さえも超えて清子の魂を伝えたいと考えています。

 

▼映像「きよこのくら」

映像「きよこのくら」は、解体してゆく蔵の映像にアニメーションや清子と交流のあった方々のインタビューを織り交ぜた、今までにない映像作品です。崩れ逝く蔵と蘇る詩人の魂に映像の鬼才.中村智道が挑みます。上映時間20分間。

            

           監督:中村智道

       

中村智道-ナカムラトモミチ

岡山県赤磐市在住の映像作家・美術家2004年ごろから、独学でアニメーションの制作を始める。主に自然界を観察した結果得られる生命や魂の流転や心の深層、近年では新自由主義やグローバリズムによって失われつつある魂等を題材に作品を制作している。2007年に初のアニメーション作品「ぼくのまち」を発表後バンクーバー国際映画祭(カナダ)等世界各地の映画祭等で発表される。2009年に2作目の「蟻」を発表、オーバーハウゼン国際短編映画祭(ドイツ)をはじめ、ポンピドゥーセンター(フランス)ソフィア王妃芸術センター(スペイン)等でも発表される。2015年に「天使モドキ」を発表。タンペレ映画祭(フィンランド)をはじめ、世界各地の映画祭で上映される。同年、岡山県の事業、湯原温泉AIRの作家として選抜され、不特定多数の他者の目線によって個人が支配される世界を表現した美術作品「スピリッツ零三」を発表。 2016年にはグローバル資本がもたらす大広告社会の中で、個を失った人々が、自ら奴隷化していく超階級社会を表現した「マウス画伯」展を開催している。

                                                                                         

 清子の詩を二階堂和美が朗読し、坂本弘道の音が包みます。

 

                        朗読:二階堂和美

 

二階堂和美-ニカイドウカズミ

シンガーソングライター。浄土真宗本願寺派僧侶でもある。広島県大竹市在住。

スタジオジブリ映画『かぐや姫の物語』(高畑勲監督)の主題歌「いのちの記憶」作詞作曲歌唱したことで音楽ファンのみならず広く知られるところとなる。2015年には、RCC中国放送の“被爆70年プロジェクト”のテーマソングとして「伝える花」を発表。最新作は22人編成のビッグバンド、Gentle Forest Jazz Bandとの共作『GOTTA-NI』(2016年)。ジャンルにとらわれない音楽性と、優しくも力強い歌声で、国内外から幅広く支持されている。歌唱も「サントリーやさしい麦茶」「サッポロ一番」「日産マーチ」「資生堂インテグレイト」その他多数。現在、中国新聞「洗心」欄でエッセイ「「負うて抱えて」連載中。

 

 

                        音楽監督:坂本弘道

 

坂本弘道-サカモトヒロミチ

電動工具でチェロから火花を出す演奏に代表される奇想と切なく甘美な楽想が共存する、特異な存在感を放つパフォーマー、作曲家。ボーダーレスに展開する多種多彩なセッションも特徴的。2008年ソロ公演では演奏中にチェロを燃やすパフォーマンスを敢行した。「パスカルズ」などのバンド活動、早川義夫、イマイアキノブ、友川カズキ、遠藤ミチロウ、UA、川上未映子、荒井良二、白崎映美、酒井俊など、共演・サポート多数。寺十吾、天野天街の演出作品をはじめ、コクーン歌舞伎「盟三五大切」「祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~ KERAバージョン」流山児事務所「地球空洞説」「マクベス」、シスカンパニー「グッドバイ」「草枕」「遊侠・沓掛時次郎」、ジャグリング&音楽集団「ながめくらしつ」アニメーション映画「緑子」(監督:黒坂圭太)など近年は舞台や映像作品の音楽を数多く手がける。音楽ドキュメンタリー映画「We Don't Care About Music Anyway」(2011年公開/監督:セドリック・デュピール & ガスパール・クエンツ)出演。調布市せんがわ劇場「JAZZ ART せんがわ」プロデューサー。

 

 保存会の思いを託した撮影が始まっています。この「きよこのくら」の完成と永瀬清子の魂を未来に繋げるプロジェクトにご支援下さい。

 ▼清子の魂

 清子は、誰もが尊重され、何ものにも束縛されず、自分の人生を全うできる世の中であって欲しいとの願いを詩に託しました。「降りつむ」は1948年に出版された詩集「美しい国」で発表したものです。この敗戦間もない時期に、傷ついた人々を勇気づける詩を堂々と書いた清子です。最近では吉永小百合さんがこの作品を特別な思いを持って朗読されています。

 

降りつむ    永瀬清子

かなしみの国に雪が降りつむ
かなしみを糧として生きよと雪が降りつむ
失いつくしたものの上に雪が降りつむ
その山河の上に
そのうすきシャツの上に
そのみなし子のみだれたる頭髪の上に
四方の潮騒いよよ高く雪が降りつむ
夜も昼もなく
長いかなしみの音楽のごとく
なきさけびの心を鎮めよと雪が降りつむ
ひよどりや狐の巣にこもるごとく
かなしみにこもれと
地に強い草の葉の冬を越すごとく
冬をこせよと
その下からやがてよき春の立ちあがれと雪が降りつむ
無限にふかい空からしずかにしずかに
非情のやさしさをもって雪が降りつむ
かなしみの国に雪が降りつむ。

 

 

 
▼「詩人永瀬清子」とは

                               

 撮影 小林一郎氏

詩人永瀬清子は明治39(1906)年岡山県豊田村大字松木(現在の赤磐市)に生まれ、2歳のとき、父親の赴任で石川県金沢市に一家で移り住む。16歳で父の転任のため名古屋、21歳で結婚して大阪、25歳で夫の転勤に従って東京と、数年ごとに都市を移り住んだ。                                 

17歳で詩人を志し、翌年「詩の家」(佐藤惣之助主宰)同人となり、若い頃から詩の才能を発揮。24歳で処女詩集『グレンデルの母親』を発刊し、東京時代は「時間」(北川冬彦主宰)同人や「麺麭(パン)」同人として活躍し、高村光太郎、小熊秀雄、壺井栄、長谷川時雨など、著名な文学者たちと交流していた。無名の宮沢賢治の遺稿から「雨ニモマケズ」を見つけ出したエピソードも有名。

昭和20(1945)年、39歳のとき戦禍を逃れて故郷岡山に戻ったのちは、農地改革でわずかに残された田畑で、初めての農業をしながら二男二女を育てた。またハンセン病患者の隔離施設のあった長島(岡山県瀬戸内市邑久町)へ40年間詩作の指導に通い続け、そうした者でなければ書き得ない「癩について」を遺した。           昭和27年に永瀬清子が創刊した「黄薔薇―キバラ」は現在も縁深い詩人たちの手で発行されている。昭和61年三木記念賞受賞。昭和62年『あけがたにくる人よ』で地球賞ミセス現代詩女流賞を受賞。

 平成7(1995)年、誕生日と同じ2月17日に逝去。今年2017年は23回忌にあたる。

 

 ▼「NPO法人永瀬清子生家保存会」とは

平成17年「現代詩の母」称される詩人の生家を、このまま朽ちさせてはいけないと詩人を中心とした有志が参集。平成25年5月にNPO法人の認証を受け、土地と建物の所有権を得る。詩人永瀬清子の生家保存と氏の文芸活動の研究と普及に関する事業を行ない、もって県民の文化向上に寄与することを目的とする。

            

         NPO法人永瀬清子保存会のロゴマーク

 

(保存会の活動)

●構造設計者と棟梁が加わり、井戸の建屋と母屋の改修(耐震改修含む)を行った。改修工事費用1.000万円は、詩人の知己縁者、氏の人柄や詩業を慕う者、建築価値 を知る者ら全て民間の浄財によってのみ賄われた。その間12年の歳月を要した。

●詩人の月命日の17日に生家の清掃と朗読会を続けている。

●平成28年には、永瀬清子現代詩賞を創設。

その受賞作などを編んで詩誌「いつかだれかにわたしの思いを」を発行。

●今年度は蔵の解体にあたり、記録映画を製作中である。

 
▼リターンについて

ご支援くださる方へのリターンは、サイドバーをご覧ください。画像はイメージです。

クレジットの出し方や場所は、ご支援いただいた金額を考慮いたします。クレジットのリターンと鑑賞券の発送は、本編の完成後「2017年9月」を予定しています。

●早期支援者にプレゼント
 2万円以上のご支援を下さった方で先着20名様にプレゼントいたします。

 

プレゼント:①か②のどちらかを選んでいただけます。 (画像はイメージです。)

該当者には鑑賞券とともに返信用ハガキを同封いたしますので、どちらか選んでご返信ください。

①赤磐のお酒(純米雄町)720ml   

室町酒造様にご協力頂いています。室町酒造

               

     

②赤磐の米(ヒノヒカリ)3Kg 

保存会の皆んなで田植え稲刈りをし、新米をお届けする予定です。           

  

  

 

●上映会について

鑑賞券は、どの会場でもお使いいただけます。期間もございません。

上映場所と日時は未定ですが、決まりしだい永瀬清子生家保存会のHPとFBページにて随時ご案内いたします。   下記の都市で予定しています。

<<<<<<上映場所>>>>>>

岡山県岡山市(岡山県立美術館ホール10月7日(土)14:00~)芸術性を問う審査をクリアして上映が決定しました。

★以下は10月以降に順次巡回の予定です。

岡山県赤磐市(永瀬生家)

岡山県倉敷市(時の回廊

広島県福山市(薔薇と迷宮) 

東京都三鷹市(三鷹RIスタジオー日程は同時に音楽イベントを組む予定のため調整中です)     

 

 ★次の場所での上映を調整しています。 

広島市(       )東京都(      )大阪市(      )福岡市(        )

名古屋市(      )札幌市(      )那覇市(      )

◯ストリーミングでの配信も検討しております。

 
▼最後に

蔵は泣く泣く消えてゆく

清子は天国から見ている

せめて音楽で弔おう

せめて米を満たしてやろう

壁の土を拾うてやろう

                 (NPO法人永瀬清子生家保存会

 

このプロジェクトに少しでも賛同して下さった皆さま、私たちに、ご支援下さいますよう宜しくお願い致します。そして全国に散らばっている清子ファンに届くようFacebookやTwitterで拡散していただけたら嬉しいです。

 

 

  • 2020/03/04 12:48

    こちらの活動報告は支援者限定の公開です。

  • 2017/04/25 13:16

    映像「きよこのくら」の中に登場する永瀬清子の詩の朗読を引き受けて下さった 二階堂和美さんが、先日 福山のスタジオでの収録を終えられました。 聞く人の胸を躍動させるのに安定感のある天性の声幅です。 それは永瀬清子の生き様を代弁するに相応しいもの。 どうぞ上映会を楽しみにしていて下さいね。

  • 2017/04/17 18:13

    月命日の17日なので、予定通り生家へ集い清掃をしました。 朝から雨が強くなったり止みそうになったりの繰り返しでした。 参加者は9名。 中村監督とプロデューサーの月影さんも参加してくださいました。 画像は皆で「きよこのくらの」ほんのヒトコマを覗き込んで見ているところです。 支援して下さ...

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