世の中には、ヒーローが出てくる作品がたくさんあります。
ONE PIECE、仮面ライダー、アンパンマン。
そこで戦うヒーローたちは、様々な武器や能力を使って敵を倒し、正義を語る。
ただ、「僕のヒーローアカデミア」という漫画は、他のヒーロー作品とは決定的に違うポイントがあります。
それは、そのヒーローがもつ特殊能力を「個性」と呼ぶところです。
ヒーローたちは、自分が持つ「個性」を駆使して敵を倒すんです。
私は、この漫画における「個性」への考え方が、いつも私たちが暮らしているこのリアルな社会にも活かせるのではないか、と感じています。
そもそも、このリアルな世界での「個性」って、どんなものでしょうか。
勉強ができるとか、
スポーツが得意とか、
音楽に明るいとか。
はたまた、
いつも笑顔とか、
聞き上手とか、
何事も丁寧とか。
いろいろな「個性」があると思います。
要は「個性」って、その人の長所や得意なことが直結してくるんだと思います。
ただ、ここで言えるのは、多くの人は勉強が苦手だし、小さい頃からやっていない限り大体のスポーツもなんとなくしかできない、音楽に至っては楽譜すら読めない人がほとんどです。言ってしまえば、笑顔や聞き上手、丁寧さに関しても、そのステータスが飛び抜けていることなんてそうそうないですよね。めっちゃ笑顔、とか。
つまり、得意なこと、いわゆる「個性」なんて、なかなか持っているものではないんです。
だからこそ、大学受験や就職試験の面接でも、「あなたの得意なことを教えてください」というお決まりの質問に困ってしまう人が多いのではないでしょうか。
そして、自分には「個性」がないんだと、決めつけてしまうのではないでしょうか。
この「ヒロアカ」の世界では、「個性」という言葉が特殊能力に対して使われます。
手から火が出たり、
強力なパワーを使えたり。
そして、ほとんどの人がその「個性」を生まれながらに持っていて、自分の「個性」を武器に民を守る、ヒーローという職業に誰もが憧れている。
そんな中で、「無個性」という最悪のハズレくじを引いてしまった主人公の少年緑谷出久が、どうしてもヒーローという職業を諦めきれず、自分の個性を探し求める。
この少年、どこか私たちに似ていると思いませんか?
自分には「個性」がない。
でも、どうしてもヒーローになりたい。
そんな、無謀にしか見えないこの主人公は、自分の長所や得意なことを見つけられていないのに、大学受験や就職活動を行う私たちとすごく似ているんです。
だからこそ、その主人公が自分の「個性」をどのように得て、またどのように磨いていくのか、というストーリーを描くこの漫画は、無個性に悩む現代の私たちに、自分の「個性」の探し方、磨き方を教えてくれる作品ではないか、と思うんです。
これを見て、少しでも興味が湧いたという方は、ぜひこの作品を手にとってみてください。また、すでに読者の皆さんも、読み返すことでまた違うものが得られるのではないかと思います。
文・森島健太(ヒョーロンプロジェクトメンバー)